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2015/07/24

セミナー「新観光立国に向けたインバウンドツーリズムへの取組み」を実施しました

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7月17日(金)、弊社は雑誌「行乐」編集長・袁静(えん・せい)さんと共催で、セミナー「新観光立国に向けたインバウンドツーリズムへの取組み」を実施しました。

昨今、インバウンド市場に急速に注目が集まっています。日本政府観光局によると、2014年に日本を訪れた外国人観光客の人数は、前年比29.4%増の1,341万人へと急増しました。政府は東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までに訪日外国人旅行客を2,000万人へと拡大するとしており、今後も着実な増加が見込まれます。このなかでも特に注目すべきは、急成長が予想される中国からの観光客のトレンドです。本ニュースでは、セミナーの内容を一部ダイジェストでお伝えします。

 

まず、冒頭の講演「新観光立国に向けたインバウンドツーリズムへの取組み」では、弊社インバウンド担当・木村による主要なデータの紹介と、上海現地調査からの知見共有がありました。「日本は観光先進国か?」と問いかける導入では、韓国、フランスと比較して、日本が潜在的可能性を活かしきれていないことを示しました。統計によれば、人口5千万人の韓国を訪れる外国人旅行客は約1,400万人で日本とほぼ同数、そして観光大国フランスは人口6,600万人のところに8,370万人と、人口を大きく上回る外国人旅行客を受け入れています。これらと比較すると、日本が掲げている2,000万人という目標がそれほど荒唐無稽なものではないことが分かります。また、この潜在的なインバウンドニーズは巨大な経済効果を伴い、2020年に2千万人の外国人が日本を訪れるとすれば、その経済効果は4兆円に達すると試算されています。

 

この中で最も急成長している中国人観光客に絞ってデータをみると、さらに興味深いことがわかります。まず、中国人出国旅行者数(中国から国外へ旅行する人の数)をみると、2014年には1億900万人にも達しており、5年平均増加率15%と急速に成長しているといいます。このまま伸びると仮定すれば、2020年には2.52億人に拡大する可能性もあります。このように成長を続ける巨大な中国の国外旅行マーケットですが、日本を訪れる観光客はたった2.21%に留まっているのが現状なのです。

 

では、中国人観光客にとって日本が魅力的ではないのかといえば、そうではありません。実は2014年から翌年にかけて、2年連続で日本は「中国人が希望する国外旅行希望先」でナンバーワンになっているのです。2015年の最新の調査では、なんと約4割が「日本に行ってみたい」と答えているのです。さらに、日本にやってきた中国人観光客に出口調査をしたところ、約98%が「また訪問したい」と答えているそうです。中国からのインバウンド市場は、まだまだ未開拓であるといってよいでしょう。

 

「こうした中国インバウンド市場を正しく理解するには、”中国”と一括りにしてしまわないことが大切です。メディアでは”爆買い”など一部が切り取られて報道される傾向がありますが、様々な旅行者がいることを認識しなければなりません。」と木村は強調しました。所得のみで分類しても、プライベートジェットでやってくるような超富裕層や、ツアーに一人あたり150万円以上を投じる富裕層、同じく30万円かけるプチ富裕層、そして最もボリュームが多い、パッケージツアー8万円でやってくる一般旅行者と、その実態は様々です。買い物だけでなく、体験型観光が流行の兆しを見せつつあり、マラソン大会や地域のお祭りに参加する旅行者も増えてきています。壱岐で開催されたサイクルフェスティバルでは、きれいな島の自然や空気の中で日本人サイクリストと走ろうと、100人以上の参加者が自転車持参で中国からやってきたそうです。

これからの日本の地方創生においても、訪日外国人観光客誘致は重要なテーマとなっていくでしょう。こうしたインバウンド市場の成長を「交流人口の増加」ととらえることで、人口減少に見舞われる地方を活性化していくことも考えられます。しかしながら、現状においてはレンタカーの使用が認められておらず、自治体も誘致に取り組むものの、周囲と連携せず単体で観光情報を出すことが多いなど、旅行者目線での体験設計がなされていないという課題も散見されるといいます。

 

続いて、袁静さんの講演「台頭する”親日”富裕層 –中国上海の現場から-」では、現地で今何が起こっているのか、日本のどういったコンテンツが注目されているのか、というお話がありました。日本で働いた経験もある袁さんは、2009年に北海道に特化した旅行雑誌『道中人』を創刊。この年は、中国から日本への個人旅行がはじめて解禁された年で、日本一国どころか、北海道という特定の地域だけにフォーカスした雑誌は『道中人』のみだったそうです。その後2011年には九州に特化した雑誌『南国風』を刊行し、中国人観光客に高い人気を誇る北海道・九州地区と上海をつなぐ先駆的な役割を果たしてきました。2013年には『行楽』を創刊し、北海道・九州にとどまらず、日本各地の厳選された個人旅行者向け情報を発信し続けています。

 

『行楽』の読者の多くはプチ富裕層で、読者の年齢層は20代後半から40代。中国では、世代によって消費行動が大きく異なるため、70年代生まれ、80年台生まれ、90年代と分類することが一般的です。行楽の読者層である80年代生まれの特徴は、「政治的にはニュートラルで親日派が多く、顕示的な消費行動が目立つこと」だといいます。彼らは量より質を重視する傾向があり、例えば一昔前の世代のように「何カ国を旅したか」ではなく、「沖縄の民泊」や「高野山の宿坊」といった特別な体験を話題にします。日本のマンガが置いてあるスーパー銭湯に行き、行列に並んで日本のラーメンを食べるなど、日常的に日本文化に親しんでいるそうです。

 

袁さんは参加者100名ほどの『行楽』読者限定イベントを実施していますが、そこには5倍以上の応募が殺到するそうです。浴衣とチャイナドレスの女子会など、ユニークなイベントが親日派の若者を集めているといいます。夫婦共働きが多かった主婦層が台頭しているのも最近のトレンドで、「ケーキ作りやお花、お茶の教室、着物を来て日本の古い町並みを歩くなど、日本の体験型コンテンツの需要が高まっていくでしょう」と予測を語りました。

 

また、ソーシャルメディアで拡散しているコンテンツからも、中国人が日本に求めているものを読み取ることができます。袁さんが配信する行楽のコンテンツで最も人気があったのは、「日本最高の温泉はどこ?」という温泉ランキング。「そもそも中国人はランキングが好きなのですが、加えて、たくさんの情報が氾濫するなかでどこを選べば失敗しないのか、ということを知りたがっているのです」と分析します。その他にも、函館朝市のオススメや、東京のちょっと変わったレストランなどの記事がアクセスを集めているそうです。

 

ソーシャルメディアの分析からは、観光に限らない日本文化への高い関心が読み取れます。特によく読まれているのは教育や医療といったコンテンツだそうで、なかには日本人には意外な内容も含まれます。例えば、小学生が自分でランドセルを背負って登下校する様子を取り上げた記事。背景には、上海では両親が共働きで、祖父母が子どもを迎えに行き、かばんを持ってあげることが一般的だということがあります。自分でかばんをもって登下校する日本の子どもの姿をみて、「なんて自立しているんだ!」と驚くそうです。

 

その後のパネルディスカッションやQ&Aセッションでは、参加者の方々を交えて、より突っ込んだやりとりがなされました。
弊社では、これからもインバウンドマーケットに関連する研究分析と発信につとめてまいります。

 

雑誌「行乐」

日本の旅、モノ、ライフスタイルなど日本の紹介に特化する中国で唯一の雑誌。中国全土を対象に、20万部発行されている。その掘り下げたコンテンツには定評があり、日本国内から日本語版を出版してほしいとの声も出ている。

 

袁静(えん・せい) / 「行乐」編集長
北京第二外国語大学、早稲田大学大学院修了後、日経BP社に勤務。北海道の魅力をたくさんの中国人に知ってもらおうと、2009年に「道中人」を創刊。2011年には北海道観光の進行への貢献が認められ、「VISIT北海道観光大使」の称号を受ける。2011年「南国風」を創刊。中国で日本の観光PRに活躍。2013年には鹿児島県観光誘致に貢献したことが認められ、鹿児島県伊藤知事より「薩摩大使」の称号を授与。

 

木村共宏 / (株)BOLBOP執行役員COO&CAO
神奈川県相模原市生まれ、函館・岡山育ち。東京大学工学部(旧原子力工学科)を卒業し、三井物産株式会社に18年間勤務。ITビジネス、船舶輸出ビジネス、並びに人事業務に従事。人事では国内外の採用及び制度設計に関わる。その間、鯖江市地域活性化プランコンテストのアドバイザーを務めるなど地方創生活動にも関わる。

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